「24時間換気システム」は建築基準法によって2003年7月以降に着工した建物への設置が義務づけられています。
この記事では、マンションの24時間換気システムの概要や必要な理由、システムの種類などについて解説します。
もくじ
24時間換気システムとは、居住空間の空気を室外と室内で入れ替え、家の中の空気を新鮮でキレイな状態に循環させる設備のことです。
2003年の建築基準法の改正によって義務化され、2003年7月以降に建てられる家に義務付けられています。
都心に立つマンションの場合、立地環境によっては窓を開けることが難しいケースもありますが、24時間換気システムがあることで窓を開けなくても常時外気を室内に取り入れ、室内の空気を外に排出し、室内の空気を綺麗な状態に保つことができるのです。
※1 国土交通省『シックハウス対策について知っておこう。快適で健康的な住宅で暮らすためにシックハウス対策のための規制導入改正建築基準法は平成15年7月1日に施工されました。』
24時間換気システムの設置が義務付けられた理由は、主にシックハウス症候群を防止するためです。
シックハウス症候群とは、新築やリフォームした住宅に入居した人の、目がチカチカする・喉が痛い・めまいや吐き気・頭痛がするなどの症状で、その原因の一部は建材や家具、日用品などから発散するホルムアルデヒドやVOC(トルエン、キシレンその他)などの揮発性の有機化合物と考えられています。
「シックハウス症候群」については、まだ解明されていない部分もありますが、化学物質の濃度の高い空間に長期間暮らしていると様々な健康に有害な影響が出るおそれがあります。
私たちが1日に吸い込む空気の量は、ペットボトル3万本分にも及びます。人が1日に摂取する物質のうち、室内の空気は57%です。飲み水は8%、食物は7%と比べても多くを占めます。
高気密住宅では、夏の暑さや冬の寒さ対策のため気密性が高く、何もしないと空気がこもってしまいます。
このため、 室内の空気を適切に循環させ、シックハウス症候群を予防するためには、各部屋単独の換気ではなく「計画的な換気」を取り入れる必要があり、室内の空気が1時間に半分以上入れ替わる24時間換気システムの設置が義務付けられたのです。
空気を入れ替える設備としては、24時間換気システムの他に換気扇もあります。
この換気扇と24時間換気システムの違いは、換気する範囲です。
24時間換気システムでは、家全体の室内の空気を、ゆっくりと入れ替えて循環させていくものです。
それに対して換気扇は、お風呂場やキッチン等、限られた範囲の空気を短時間で入れ替える為に使用します。
24時間換気システムには、給気と排気の方法が異なる3種類に分類されます。
住宅で設置されているのは、第1種換気か第3種換気です。ここでは簡単に3種類の特徴について紹介します。
給気と排気の両方に換気扇などの機械を用います。
24時間換気システムの種類のなかでも、効率的に換気状態を維持できるシステムです。
第2種換気は工場など特殊な環境で利用されるシステムであり、マンションでは利用されていません。
この換気システムは空気を入れ込む際の給気のみに機械を用いており、排気は自然に任せます。
排気のみに機械を使い、給気は自然に任せます。第1種換気よりもコストが抑えられるため、住宅で採用されることが多い傾向です。
『第1種換気』は空気の出し入れを機械で行うため換気効果は高くなりますが、コストが高くなります。このことから住宅・マンションではコストが抑えられる『第3種換気』が多く用いられる傾向です。
マンションの24時間換気システムの仕組みについて、空気の流れと、各居室に給気口が必要な理由について紹介します。
一般的なマンションの換気は、室外の空気を外壁に面したリビングや寝室などの壁にある『給気口』から室内に取り入れられ、居室のドアの下にある隙間(ドアアンダーカット)などから廊下を通り、浴室やトイレ、洗面所の換気扇で室外へ排気されます。
つまり、室内全体の空気は、人が主に生活する「居室」から、湿気や臭気の発生する「浴室・トイレ・洗面・台所」へ流れるように換気経路が設計されています。
先に紹介したようにマンションでは、排気のみに機械を使い、給気は自然に任せる第3種換気が一般的です。
このため、第3種換気を用いている場合、すべての居室に自然給気口をつける必要があります。
また、給気口がない部屋もアンダーカットといってドアと床の間に隙間があったり、ドアに穴(ガラリ)を設けるなど、空気が流れる設計になっています。
結論を言うと、24時間システムは止めてはいけません。
先に述べた通り、24時間換気システムの設置が義務付けられた理由は、主にシックハウス症候群を防止するためです。
このほかにも適切な換気が行われないと湿気がこもってしまうため、結露やカビが発生しやすい環境となってしまいます。
このような弊害もあるので、自己判断で24時間換気システムの使用を止めるのは控えるようにしましょう。
例外として、台風等の強風時には雨水が侵入する恐れがあるため、運転を停止することをお勧めします。
(※2)国土交通省『シックハウス対策について知っておこう 快適で健康的な住宅で暮らすために 改正建築基準法に基づくシックハウス対策』
換気システムを止めてはいけないとはいえ、24時間換気システムは、文字通り24時間稼働させているので電気代を気にする方もいますが、電気代は月に数十円~1,600円程度と少額です。
詳しくは関連記事の『【知っていれば安心】24時間換気の電気代はいくら?節約のために止めても大丈夫?』で解説しているので気になる方はあわせてご覧ください。
24時間換気システムは、2週間に1回程度の掃除、1年に1回程度のフィルター交換が必要です。
掃除は、フィルターのホコリを掃除機で吸い取るのが基本ですが、メーカーにより水洗いできるタイプもあります。
詳しくは関連記事の『【画像付】24時間換気システムの掃除方法まとめ|カバーの外し方・掃除できない場合の対処法』で解説しているので気になる方はあわせてご覧ください。
※1 国土交通省『シックハウス対策について知っておこう。快適で健康的な住宅で暮らすためにシックハウス対策のための規制導入改正建築基準法は平成15年7月1日に施工されました。』
※2 国土交通省『シックハウス対策について知っておこう 快適で健康的な住宅で暮らすために 改正建築基準法に基づくシックハウス対策』