住宅を購入した際、条件を満たせば税金が安くなる「住宅ローン控除」。マイホームを購入する際に有利になる制度ですが、中古住宅の場合も控除を受けられるのでしょうか?
本記事では、中古マンション・中古戸建を購入する時の住宅ローン控除についてご紹介。中古住宅購入時に、住宅ローン控除を受けられる・受けられないはどのような条件で決まるのかを解説していきます。
*2024年3月現在の法令・通達等に基づいて作成しています。税制改正等により内容が変更となる場合があります。詳しくは、お近くの税務署・税理士など専門家へご確認ください。
もくじ
中古住宅を住宅ローンを使って購入する際に利用したいのが、住宅ローン控除制度です。住宅ローン控除は新築住宅だけでなく、中古マンション・中古戸建を購入する際にも利用することができます。
2024年の税制改正によって、住宅ローン控除の要件はどのように変わるのでしょうか?
本記事では、住宅ローン控除の概要や、住宅ローン控除を受ける際の手続き方法などについて紹介します。住宅ローン控除をスムーズに利用できるよう、どのような場合に住宅ローン控除が受けられなくなってしまうのかを押さえておきましょう。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、所得税の控除が受けられる制度です。正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、一戸建てでもマンションでも適応可能。最大で年末のローン残高の0.7%まで控除されます。
住宅ローンの借入額は高額なので、数千万円の住宅を購入した場合は、その0.7%は年間で数十万円を超える場合も多々あります。住宅ローンを利用して住宅を購入等した場合に有利になる制度の一つが住宅ローン控除です。
住宅ローン控除は要件を満たせば、新築住宅・中古住宅の購入と増改築に適応されます。
中古住宅を購入する場合、主に次の要件を満たす必要があります。
床面積は、登記簿に表示されている床面積で判断されます。マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については床面積に含めず、登記簿上の専有部分の床面積で判断されます。
面積の算出方法は広告や売買契約書で異なる場合があるため、必ず登記簿上の面積で確認しましょう。
また、1981年以前の中古住宅には、耐震基準に適合していることを示す耐震基準適合証明書などが必要です。
中古住宅を購入する場合、「仲介」と「買取再販住宅」という二つの販売形態があります。
「仲介」は住宅を売りたい人が不動産会社に依頼し、買いたい人を探す方式です。一方「買取再販住宅」は、不動産会社が住宅を買い取ってリフォームやリノベーションを行ったうえで取引する住宅のことです。
買取再販住宅は設備や内装が改修されたリノベーション済み物件のため、価格は仲介のみの住宅よりも割高になりやすいもの。
しかし、最新の設備を備えていたり、美しい内装の物件が新築よりも安く購入できたりする点はメリットと言えます。また、住宅の購入後に買主自身が手を加えなくて良いのもメリットです。
同じ中古住宅ですが、住宅ローン控除においても仲介のみの住宅と買取再販住宅では、次の違いがあります。
住宅ローン控除において、仲介のみの中古住宅と買取再販住宅で異なる点の1つ目は控除期間です。
仲介のみの場合は中古住宅(既存住宅)の控除期間が10年ですが、買取再販住宅の控除期間は新築住宅と同じ13年間です。控除期間が長いほど節税効果は高くなるため、買取再販住宅の方が控除額が大きくなります。
仲介のみの中古住宅(既存住宅)と買取再販住宅では、中古住宅のローン控除額の対象となる借入金の限度額も異なります。
借入限度額とは実際に借りられる金額ではなく、ローン控除額対象となる借入金の限度額を指しますが、仲介のみの中古住宅(既存住宅)は借入限度額が2000万円~3000万円であるのに対し、買取再販住宅は最大で4500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は最大5,000万円)です。
詳しい内容については、次項で紹介します。
2つ目の違いと関連しますが、中古住宅の住宅ローン控除は、買取再販住宅の場合、住宅性能によって借入限度額が段階的に変わることも特徴です。
2024年の税制改正により、以下のように変動します。
住宅の種類 | 2023年入居 | 2024年入居 | 2025年入居 | |
新築住宅・買取再販 | 長期優良住宅・ 低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 (子育て世帯・若者夫婦世帯向け5000万円) | 2024年と同じ方向性で検討 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 (子育て世帯・若者夫婦世帯向け4,500万円) | 同上 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 (子育て世帯・若者夫婦世帯向け4,000万円) | ||
その他の住宅 (既存住宅「その他の住宅」の場合) | 3,000万円 | 0円 (2023年迄に新築の建築確認は2,000万円) | ||
既存住宅 | 長期優良住宅・ 低炭素住宅・ ZEH水準省エネ住宅・ 省エネ基準適合住宅 | 3,000万 | ||
その他の住宅 | 2,000万 | |||
控除期間 | 新築住宅・買取再販 | 13年 (「その他の住宅」は、2024年以降の入居の場合10年) | ||
既存住宅 | 10年 |
仲介のみの中古住宅(既存住宅)の場合は、長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅が3,000万円、その他の住宅は2,000万円と、借入限度額は2段階のみです。
中古住宅を購入する際、住宅ローン控除を受けられないケースもあります。次の項目に当てはまる場合は適応外となるので、物件を選ぶ際に注意が必要です。
まず、投資用の住宅として購入した中古住宅など、住宅ローン控除を受ける本人が自分で居住しない場合は適応外となります。
また、住宅の引き渡しまたは工事完了から6ヵ月以内に居住を開始する必要があります。実際に本人が期限内に済み始めたかどうかは、住民票で確認されますので、住民票の移動は速やかに行いましょう。
中古住宅の住宅ローン控除は借入期間が10年以上のものが対象になります。そのため、10年以下のローンの場合は住宅ローン控除は適応されません。
加えて、「住宅ローン控除は年末のローン残高の0.7%まで控除」という仕組みのため、控除期間の間に繰り上げ返済を行った場合は、ローン残高が少なくなる分、控除額も少なくなります。
合計所得金額とは、給与や事業で得た所得のほか、土地・建物・山林などの譲渡による所得、退職金や公的年金などを合計した金額です。この合計所得金額が2000万円以下でなければ、住宅ローン控除を受けられません。
合計所得金額が2000万円以下かどうかの判断は毎年行われるので、たとえ前年に2000万円を超えて、控除を受けられない場合でも、その翌年に合計所得金額が2000万円以下になれば、住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除の対象となるのは、住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ床面積の2分の1以上が自己の居住用である必要があります。これらの床面積の下限を満たしていない場合、住宅ローン控除を受けられません。
中古住宅の住宅ローン控除の要件でご紹介したとおり、住宅の床面積は、登記簿に表示されている床面積(マンションの場合は登記簿上の専有部分の床面積)で判断されます。
広告や売買契約書に記載されている床面積は、不動産登記簿の床面積と異なる場合もあります。購入してしまってからでは取り返しがつかないため、必ず登記簿上の面積で確認しましょう。
住宅ローン控除を受けるためには、居住した年およびその前の2年の計3年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないことも条件に含まれています。譲渡所得とは、土地や建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却することで得た所得をいいます。
課税譲渡所得金額は「収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額 収入金額-取得費-譲渡費用」で算出され、本来は税金を納めなければならないのですが、一定額までの免除や、所有年数に応じた税率の軽減などの特例があります。
住宅ローン控除を受ける場合は、こういった特例を受けていることも要件となります。
2024年2月現在、住宅ローン控除は2025年12月31日までの適応予定とされています。そのため、2025年の12月末までに入居していることが条件になります。
2026年以降、住宅ローン控除が延長されるかどうかや、内容の改正があるかは分かっていません。中古住宅の購入を検討しているのであれば、2025年12月末までに入居できるように準備を進めるのが良いでしょう。
※ 2025年度の条件については2025年度税制改正にて同様の方向性で検討される旨が発表されていますが、2024年2月現在確定はしておりません。詳しくは国土交通省・国税庁のHPでご確認ください。
中古住宅の住宅ローン控除で注意が必要なのは、新耐震基準適合住宅の基準を満たしていない物件は控除を受けられないということです。1982年以降に建築された住宅なら新耐震基準適合住宅の基準を満たしているので、住宅ローン控除を受けたいのであれば、築年数をしっかり確認しましょう。
また、1981年以前に建築された住宅であっても、新耐震基準適合住宅の基準を満たし、新耐震基準に適合しているという証明がされたものについては、控除を受けることができます。
中古住宅・新築住宅に関わらず、住宅ローン控除を受ける際には、控除の条件を満たすことはもちろんですが、適切な手続きを行うことが必須です。
住宅ローン控除は、入居の翌年に確定申告で手続きを行い、控除された金額が振り込まれる流れです。所得税は確定申告後約1~2カ月後に控除された金額が振り込まれ、住民税は6月以降に控除後の住民税が給料から引かれます。
住宅ローン控除を受けるための手続きは、控除を受ける1年目の年と2年目以降で対応が異なります。
・住宅ローン控除を受ける1年目
会社員の場合であっても確定申告が必要です。手続きは、入居した翌年の3月15日までに行います。
次の必要書類を申告書に添付して、納税地の税務署に提出するか、インターネットでの申告を行いましょう。
【必要書類】中古住宅の場合
共通して必要となる書類
① 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
② 住宅の登記事項証明書 (原本※)
③住宅の売買契約書の写し
認定長期優良住宅の場合
④ 長期優良住宅建築等計画等の認定通知書 の写し
⑤ 住宅用家屋証明書 (写し可)または 認定長期優良住宅建築証明書
低炭素住宅の場合
④ 低炭素建築物新築等計画の認定通知書 の写し
⑤ 住宅用家屋証明書 (写し可)または 認定低炭素住宅建築証明書
低炭素建築物とみなされる特定建築物の場合
④ 特定建築物用の住宅用家屋証明書
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅の場合
④ 住宅省エネルギー性能証明書 または 建設住宅性能評価書 の写し
住宅ローン控除を受けるための手続きは毎年行いますが、会社員の場合は2年目以降の確定申告は必要ありません。会社で行う年末調整の際に、住宅ローン控除の手続きをすることが可能で、税務署や銀行などから届く必要書類を、勤め先に提出すれば手続き完了です。
年末調整で住宅ローン控除を行う際に必要な書類は次の2点です。
・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
フリーランスや個人事業主の場合は、2年目以降も確定申告が必要です。1年目と同様に、確定申告の際に必要書類を税務署に提出します。
2024年の税制改正大綱では住宅ローン控除にまつわる改正も決まっています。新築住宅・買取再販住宅については、住宅性能が省エネ基準適合を満たしていない「その他の住宅」の借入限度額が0円になったほか、全体的に限度額が縮小される傾向にあります。
一方で中古住宅は変更がなく、省エネ基準適合の場合は3,000万円、そのほかの住宅は2,000万円のままとなっています。
また前述のとおり、新築および買取再販住宅における省エネ適合住宅に関しては、子育て世帯・若者夫婦世帯が2024年に入居する場合において、次のように借入限度額が拡充されます。
・長期優良住宅・低炭素住宅:最大5,000万円
・ZEH水準省エネ住宅:4,500万円
・省エネ基準適合住宅:最大4,000万円
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中古住宅で住宅ローン控除を受けるためには、「控除を受ける本人が、引き渡しから6ヵ月以内に居住用として入居している」「床面積が50平方メートル以上である」「合計所得金額が2000万円以下」「住宅ローンの借入期間が10年以上」などの新築住宅と共通した条件のほか、「1982年以降に建築または現行の耐震基準に適合」といった、中古住宅特有の条件もあります。
2022年の改正で、中古住宅の要件が緩和されたこともあり、中古住宅でも住宅ローン控除を受けやすくなっています。
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