不動産について 省エネ

省エネ住宅義務化で住まい選びはどう変わる? ポイントと対策を整理

2023.07.07 2024.03.12
省エネ住宅義務化

2025年の4月から、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合の義務付けが予定されています。

つまり、新たに住宅を取得する場合、その住宅は省エネ基準を満たしていなければなりません。
この省エネ基準適合の義務化は、リノベーションや増改築にも適用されます。

具体的な義務化の内容やポイント、省エネ基準を満たすための施工で受けられる補助金などについてしっかり理解しておきましょう。

省エネ住宅が義務化された背景 ※1

義務化された背景

省エネ住宅が義務化された背景には、2050年のカーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の目標があります。

2050年カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることです。
これに向け、2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減する目標が宣言されました。

こうした目標達成のためには、日本のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野について対策をしなければなりません。

そこで、2022年6月17日に公布された、『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』によって建築物省エネ法が改正され、省エネ住宅の義務化が決定しました。

※1 国土交通省「建築物省エネ法について」

具体的な変更点

省エネ住宅義務化による大きな変更点として、「省エネ基準適合の拡大」と「断熱等級4以上の必須化」が挙げられます。

それぞれ具体的にどういった変更なのか、詳しい内容を解説します。

省エネ基準適合の拡大 ※1

2022年の建築物省エネ法の大幅改正の中でも特に注目すべきなのが、「省エネ基準適合の拡大」です。

省エネ基準適合の拡大とは、省エネ基準を満たしていなければならない建築物の範囲が拡大したことを意味します。

法改正前は、省エネ基準を満たさなければならない建築物は中規模以上(300㎡以上)の非住宅(住宅以外の建築物)に限られていましたが、法改正により戸建住宅を含む小規模な住宅も対象となり、原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられました。

新築だけでなく増改築などのリノベーション物件も対象になっており、以下のようなことが求められます。

  • 増改築部分の壁・屋根・窓などに一定の断熱性能を持たせること
  • 増築部分に一定性能以上の空調・照明設備を設置すること

なお、実際に省エネ基準適合が拡大されるのは2025年からとされています。

※1 国土交通省「建築物省エネ法について」

断熱等級4以上の必須化 ※1

省エネ基準適合の拡大により、これまで住宅については届出義務・適合努力義務とされていた「断熱等級4以上」が必須(適合義務)となります。

断熱等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)」で基準が定められており、等級4は「熱損失等の大きな削減のための対策が講じられている」ものとされます。
断熱等級の具体的な基準は、8つに分けられた省エネ地域区分ごとに少しずつ異なるので、施工会社に確認が必要です。

なお、国土交通省は、遅くとも2030年までに義務化の最低ラインを断熱等級5に引き上げることも発表しています。

※1 国土交通省「建築物省エネ法について」

住宅の省エネ基準

住宅の省エネ基準

続いて、そもそも省エネ住宅とはどのような基準を満たした住宅なのか解説していきます。

省エネ性は「外皮性能」と「エネルギー消費量」という2つの指標から評価されます。

外皮性能

外皮性能とは、壁や床、天井、窓など建物の外回りの省エネ性能を指します。

外皮性能の程度は、外皮平均熱貫流率「Ua値(ユーエー値)」と冷房期の平均日射熱取得率「ηAC値(イータ・エーシー値)」から判断されます。

外皮平均熱貫流率とは、室内と外気の熱の出入りのしやすさを表した数値です。値が小さいほど断熱性能が高いとされ、以下の式で算出されます。

Ua=単位温度差当たりの外気総熱損失量÷外皮総面積

一方、冷房期の平均日射熱取得率は、太陽日射の熱の室内への入りやすさを示した指標です。値が小さいほど遮蔽性が高いとされ、以下の式で算出されます。

ηAC=単位日射強度当たりの総日射取得量÷外皮総面積×100

どれくらいの基準値以下であるべきかは、前述の省エネ地域区分によって異なります。

一次エネルギー消費量

一次エネルギー消費量とは、冷暖房や換気、照明、給湯、家電といった住宅設備が消費するエネルギー量から太陽光発電などによる再生可能エネルギーを差し引いたものです。

省エネ住宅として認められるためには、床面積や地域などを基準に設定された「基準一次消費エネルギー消費量」を、実際にその建物において消費されると考えられる「設計一次エネルギー消費量」が下回っていなければなりません。

なお、一次エネルギー消費量は、暖房設備、換気設備、給湯設備などの項目ごとに算出されます。

省エネ住宅のポイント

省エネ住宅の義務化によって、今後新築を建てる場合はもちろん、中古物件の増改築をする場合でも省エネ基準を満たさなければなりません。

どうすれば省エネ基準を満たせるのか、ポイントを解説します。

断熱性

省エネ住宅を実現させるには、まず断熱性を高める必要があります。

壁はもちろん、床、屋根にも断熱材を施工し、屋内外の熱の移動を少なくしましょう。

この際、窓などの開口部の断熱性もしっかり高めることが重要です。
冬に室内から出ていく熱や夏に外から入ってくる熱の大半は、窓などの開口部を経由しているためです。
断熱サッシや複層ガラスを導入すると断熱性が高くなり、少ないエネルギーで効率よく適温を保てるようになるでしょう。

リノベーションの場合は、もともとある窓に内窓を設置するのもおすすめです。断熱性が高まると、結露ができにくくなる効果も得られます。

気密性

省エネ住宅を実現するには、断熱性とともに気密性を高めることも重要です。住宅に隙間があると、隙間から熱が移動してしまうためです。

断熱材を隙間なく使用したり、場所によって引き違い窓だけでなく外開き窓、内倒し窓、上げ下げ窓など気密性の高い種類の窓を取り入れたりすることもポイントです。

ただし、気密性を高める際には適切な換気対策も重要です。適度に空気の流れができると、室内の温度が均一になり、快適性が高まります。
換気については2003年の建築基準法改正で、すべての住宅への24時間換気設備の搭載が義務化されています。

日射コントロール性

外部からの日射熱が室内に入るのを防ぎ、室温の上昇を抑える「日射コントロール性」も省エネ住宅を実現するために重要です。

断熱性を高める一方で日射コントロール性が低いと、日射熱で上昇した室温が下がりにくくなります。その結果、夏に冷房で消費するエネルギーが多くなってしまうのです。

日射コントロール性を高めるには、遮熱複層ガラスや庇、日除けテント(オーニング)などを設置すると効果的です。

日射コントロール性が高められているかどうかは、前述の「冷房期の平均日射熱取得率」で判断できます。

省エネ住宅のメリット※2

省エネ住宅は、環境に対する負荷が低いだけでなく、住んでいる人自身にもさまざまなメリットをもたらします。

具体的なメリットを3つ紹介します。

1年を通して快適

省エネ住宅は、夏は涼しく冬は暖かいため、1年を通して快適に過ごせます。

省エネ住宅は断熱性や気密性が高いため、外部から冷たい空気や熱い空気が入ってきにくくなっています。
また、トイレや浴室、廊下など暑くなったり寒くなったりしやすいところでも一定の温度が保たれるのです。

断熱性が高いと結露やカビも発生しにくくなるため、家の手入れが楽になるという点でも、快適な住環境が叶うといえるでしょう。

健康リスクを軽減できる

快適な室温で過ごせる省エネ住宅には、健康リスクの軽減というメリットもあります。

主なメリットとして、ヒートショックの防止があげられます。
ヒートショックとは、家の中の温度差が原因で起こる脳梗塞や心筋梗塞、めまいなどによって、入浴中の溺死などの事故につながる健康リスクのことを指します。

年間のヒートショックの報告件数は交通事故よりも多いと言われます。長く住む住居だからこそリスクを減らしておくことは重要です。

光熱費を削減できる

省エネ住宅は外気温度の影響を受けにくくなっているうえ、室内の温度を保つのに長けているため冷暖房の効きがよくなります。

冷暖房費を削減できるためランニングコストを抑えられるのも、嬉しいメリットでしょう。

さらに太陽光パネルなどを設置すれば、電気を自前でまかなえるだけでなく、余った電気を売ることによる売電収入も得られます。

※2 国土交通省「省エネ住宅でかなう 健康&快適生活」

省エネ住宅のデメリット

省エネ住宅は、快適な住み心地とランニングコストの削減につながる住まいです。

一方、省エネ基準をクリアするためには一定のコストと労力が必要です。

省エネ基準クリアには、断熱材や二重窓など、性能の高い建材や設備が必要になり、施工費用が高くなりやすいです。
また、確かな設計・施工技術も必要になるため、建築会社選びも慎重に行う必要があります。

省エネ住宅のコストを下げる補助金制度(※3)(※4)(※5)

省エネ住宅のコストを下げる補助金制度

省エネ住宅のためにかかるコストは、補助金制度によって抑えることも可能です。2023年度では以下の補助金を利用できます。

  • 子育てエコホーム支援事業※3
  • 住宅の断熱性向上のための先進的設備導入促進事業※4
  • 戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業)※5

子育てエコホーム支援事業では、特定の施工を含む工事をすると補助金を受けられます。

住宅の断熱性向上のための先進的設備導入促進事業は、窓の断熱性を高めるリフォームに対して補助金を給付する事業です。

戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業では、例えば中古戸建て住宅の断熱リフォームなら120万円を上限として、費用の3分の1が補助されます。

※3 国土交通省「こどもエコすまい支援事業」
※4 国土交通省「先進的窓リノベ事業の概要」
※5 省庁連携「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業)」

省エネ住宅の取得で得られる優遇税制(※6)(※7)(※8)

省エネ住宅の取得では、優遇税制を受けることもできます。

その1つに、住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン減税があります。
年間所得が2,000万円以下で、10年以上の住宅ローンを組んで省エネ住宅を取得または改修した場合、所得税額が最大で364万~455万円控除されます。※6

住宅ローンの利用に関わらず受けられるものとしては、「認定住宅新築等特別税額控除」により新築住宅の取得で最大65万円、リフォームなら「省エネ改修に係る所得税額の特別控除」で最大25万円の減税措置を受けられます。※7 ※8

他にも、固定資産税や不動産取得税の軽減、住宅取得にあたっての贈与税の非課税枠拡大もあります。補助金とは異なりこうした優遇税制の申請は住宅取得者が行います。それぞれ適用要件が定められているのでよく確認しておきましょう。

※6国土交通省「住宅ローン減税」
※7国税庁「 No.1221 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」
※8 国税庁「No.1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」

省エネリノベーションエコキューブ

新築ではあたりまえとなってきた、省エネ性能をいちはやく中古マンションにも取り入れたのが、インテリックスのエコキューブ。内窓・冷暖房・換気・給湯・照明などを省エネルギー性能が高い設備へ新規交換することにより、省エネ化を実現しています。

さらに物件ごとに一つひとつ、エビデンスとなる省エネルギー性能レポートを発行し省エネ性能を見える化しています。

エコキューブサイトで詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

*物件ごとに内装内容が異なります。詳しくは、物件ごとにお問合せください。

省エネリノベーション エコキューブ

省エネリノベーション

省エネ住宅義務化について理解し、将来的にも安心な住まいを手に入れよう

これから住宅の購入を検討する場合は、省エネ住宅の義務化を踏まえ、補助金などを活用しながら基準を満たす設計・施工をする必要があります。

省エネ住宅の設計・施工には高い技術が必要なので、依頼する建築会社選びもより慎重に行う必要があるでしょう。

インテリックスのエコキューブなら省エネ性能を事前に確認した上で、リノベーション済みマンションを購入できるため、購入後の省エネリノベーションにかかる手間や不安を軽減できます。

ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度インテリックスにお問い合わせください。

参考文献

※1 国土交通省「建築物省エネ法について」
※2 国土交通省「省エネ住宅でかなう 健康&快適生活」
※3 国土交通省「こどもエコすまい支援事業」
※4 国土交通省「先進的窓リノベ事業の概要」
※5 省庁連携「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業(経済産業省・国土交通省連携事業)」
※6 国土交通省「住宅ローン減税」
※7 国税庁「 No.1221 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」
※8 国税庁「No.1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」