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基礎断熱とは?床断熱との違いやメリット・デメリット

2023.04.17 2023.12.29
基礎断熱とは

寒い冬でも室内で快適に過ごせる家づくりを考えるのであれば、対処したいことの一つが底冷えです。

冬に「足元から底冷えしてなかなか温まらない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。いくら暖房をきかせていても、足元がひんやりとしていれば寒さを感じやすく、暖房の効果も落ちてしまいます。

底冷えを避けるためには、床の断熱性能を高めることが重要です。

床の断熱方法には、大きく分けて「基礎断熱」と「床断熱」の2つがあります。

この記事では、基礎断熱と床断熱の違いや種類、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

基礎断熱とは

基礎断熱とは

基礎断熱とは、建物の基礎のコンクリートを断熱材で覆う工法です。

比較的新しい断熱工法で、それまで一般的だった床断熱工法と比べると施工件数は少ないものの、今ではリスク回避の知見なども蓄積されてきており、寒冷地を中心に採用されるようになっています。

床断熱との違い

基礎断熱と床断熱の大きな違いは、断熱材を設置する場所です。

基礎断熱では、建物の基礎部分を断熱材で覆います。床下の空間も室内空間の一部と考えて、室内と同じように温度調節や換気を行います。

床断熱とは、住宅1階の床のすぐ下に断熱材を敷き詰めて、床から断熱する工法です。

床断熱は基礎断熱よりも歴史の長い断熱工法のため、施工方法に習熟している施工会社であれば、施工は比較的スムーズに進みます。また、費用も基礎断熱より抑えられる傾向です。

ただ、適切に施工されないと断熱材が断熱材自体の重さで下がってしまい、床と断熱材との間に隙間が生まれ、気密性が下がってしまうことがあります。

気密性が低いと、せっかく温めた家の中の熱を外に逃がす原因となるため、断熱性能が高いのに家が寒い、といったことが生じる可能性があります。

また、床断熱の場合、基礎部分は断熱処理をしないため、冷気が入り込む可能性があります。夏場は、基礎部分に冷気がこもることで、結露が発生しカビの原因となってしまうこともあります。

後述する基礎断熱のメリット・デメリットと照らし合わせたうえで、最適な工法を提案してくれる不動産会社を選びましょう。

基礎断熱のメリット

基礎断熱のメリット

続いて、基礎断熱のメリットをご紹介します。

断熱性・気密性が高い

基礎断熱の1つ目のメリットは、断熱性と気密性が高いことです。

基礎断熱では、床下の気密パッキンにより外気の侵入を防ぐため、床下の温度や湿度を室内と室温に近い温度に保てます。

冬でも床下からのひんやりした空気をシャットダウンできるので、床断熱よりも断熱性・気密性に優れているというのが大きな利点です。

また、基礎断熱では基礎の外周部の立ち上がり部分に断熱材を設置するため、断熱材の厚みは自由に変えられます。床断熱のように構造部の太さに断熱材の厚みを合わせる必要がなく、断熱材に厚みを持たせることが可能です。

その結果、分厚く敷いた断熱材により高い断熱効果や気密効果を得ることができるというわけです。

省エネにつながる

基礎断熱の2つ目のメリットは、省エネになり冷暖房費を節約できるという点です。

基礎断熱では、住宅の基礎のコンクリート部分に断熱材を施工します。基礎コンクリートの大きな特徴は、地熱の影響を受けることです。

夏は外気温よりも地熱の方が低いので、コンクリートが冷やされます。その結果、床にもひんやりした空気が伝わり、暑い夏でも室内で快適に過ごせます。

一方、冬は地熱の影響で基礎コンクリートが蓄熱するため、温かさが持続します。

床下の断熱効果が高い基礎断熱なら、室内の温度は外気温に左右されにくく、一定の温度に保ちやすくなります。

夏の冷房や冬の暖房の使用量を減らすことができ、冷暖房費の節約につながります。

配管が凍結しにくくなる

基礎断熱の3つ目のメリットは、床下の配管が凍結しにくくなる点です。

床下も室内の一部と考える基礎断熱では、基礎工事でコンクリートに断熱材を施工し、床下も室内と同じような気温を保てるので、床下の水道管は凍結しにくくなります。

職人による施工に違いが出にくい

基礎断熱の4つ目のメリットは、施工する職人に技術差があっても違いが出にくいという点です。

基礎断熱は、工法がそれほど多くありません。工法が限られているため施工の品質を担保しやすく、施工する職人の技術が違っても差が出にくい特長があります。

また、基礎断熱では、基礎に「断熱気密パッキン」を使います。この断熱気密パッキンは、床断熱で一般的に使われる通気パッキンよりも施工が簡単なので、この点でも職人による差が出にくい特長があります。

基礎断熱は床下がオープンな状態で施工するため、目視で状況を把握しやすく、施工品質の管理をしやすい面もあります。

基礎断熱のデメリット

基礎断熱のデメリット

次に、基礎断熱のデメリットを紹介します。

シロアリ被害に気付きにくく、被害を受ける可能性がある

1つ目のデメリットは、シロアリ被害に気付きにくく、被害を受ける可能性がある点です。

床断熱の場合は床下に換気口を設けるため、床下の風通しが良くなり多少の光も入り込みます。シロアリは風や光を嫌うため、シロアリ被害を防ぐのにある程度効果的な環境といえます。

また、床下に空間ができることで、目視でシロアリを確認することも可能です。

一方、基礎断熱では、断熱材と基礎との間にシロアリが入り込みやすく、被害を受けてしまうケースがあります。

基礎を断熱材で覆うため、シロアリを目視では確認できず、シロアリ被害に気付くのが遅れてしまい、被害が拡大してしまう可能性もあります。

基礎断熱でシロアリ被害を防ぐには、シロアリ対策が施された断熱材を使う、基礎周辺に防蟻薬剤を注入するなど、別途対策が必要です。

乾燥するまでにカビが発生しやすい

2つ目のデメリットは、乾燥するまでの間にカビが発生する恐れがあるという点です。

基礎コンクリートは水分を含んでおり、基礎工事が完成してからも、すぐに水分が抜けるわけではありません。基礎工事の完成後も約2年間は水分を蒸発し続けるため、カビが発生しやすくなります。

コンクリートが敷かれる土台部分は日が当たらず、そもそも乾燥に時間がかかる場所です。

対策としては、床下に24時間換気を設計する、断熱換気口をつけるなどがあります。

基礎断熱の種類

基礎断熱には、大きく分けると「基礎内断熱」と「基礎外断熱」という2種類があります。

それぞれどのような工法なのか紹介します。

基礎内断熱

基礎内断熱は、基礎の立ち上がりの内側に断熱材を貼る工法です。

床断熱と比較すると、断熱材の厚みを増やすことができるのがメリットです。

基礎外断熱と比べると断熱性は若干劣るとされていますが、シロアリ被害を減らすことができるのが特長となります。

基礎外断熱

基礎外断熱は、基礎の立ち上がりの外側に断熱材を貼る工法です。

基礎外断熱も、床断熱と比べると断熱材の厚みを出しやすいというメリットがあります。また、基礎内断熱よりも断熱性に優れているという利点もあります。

ただし、近年主流の工法は基礎内断熱であり、基礎外断熱で施工する工務店等は少ないのが現状です。

基礎外断熱はメジャーな方法ではない理由

基礎内断熱よりも断熱効果が高い基礎外断熱が、主流の工法でない理由は、基礎外断熱には以下のようなリスクがあるからです。

シロアリが侵入しやすい

1つ目の理由は、シロアリが侵入しやすいという点です。

基礎外断熱は断熱材を外に貼るため、シロアリが断熱材の内部に侵入するリスクが高くなります。

基礎の外側に貼った断熱材とコンクリートのすき間は温かくて暗く、風の通りも少ない、シロアリが好む環境です。すき間から入り込んだシロアリは、性質上、上へ上へとあがるため、建物の躯体にまで被害が及んでしまうこともあります。

床下にカビが発生しやすい

2つ目の理由は、床下にカビが発生しやすいという点です。

基礎断熱では、床下に換気口を設置しません。また、梅雨から夏にかけてのシーズンでは、地熱の影響により床下の温度が下がります。

床下の温度が下がると相対湿度が高くなり、床下にカビが発生しやすくなってしまいます。

施工難易度が高い

3つ目の理由は、施工難易度が高いという点です。

基礎外断熱を採用する場合、シロアリ対策として断熱材と基礎の間にシロアリ対策製品を施す必要があり、施工難易度が上がります。

資材費や施工費が高くなることにより、建築コストも高くなってしまいます。

基礎外断熱と比べた基礎内断熱のメリット

基礎内断熱のメリット

基礎内断熱は基礎外断熱よりも断熱効果は落ちるものの、リスクが少ないため採用する工務店は多いです。

この章では、基礎外断熱と比べた基礎内断熱の効果を紹介します。

基礎断熱でシロアリ被害を最大限防止できる

1つめの効果は、基礎断熱によりシロアリ被害を最大限防止できることです。

基礎内断熱にするからといって、シロアリ被害を100%防げるわけではありません。

ただし、断熱材が外側ではなく内側にある方が、外から直接シロアリが侵入するのを防ぎやすくなります。そのため、特にシロアリの活動が活発な地域では、基礎内断熱がスタンダードとして採用されています。

コストを抑えられる

2つめは、建築コストを抑えられるという点です。

基礎外断熱は工程が多く、施工難易度も高いため建築コストが増す傾向があります。

一方、基礎外断熱と比較して基礎内断熱は施工難易度が低く、工程が少ないため、基礎外断熱よりもコストを抑えやすいという利点があります。

マンションの場合の断熱方法

これまで、戸建て住宅の断熱方法について解説してきました。では、マンションの場合には、どのような断熱方法があるのでしょうか。

この章では、マンションで快適に過ごすための断熱方法について説明します。

内断熱と外断熱に分かれる

マンションの断熱方法も、戸建て住宅と同じように内断熱と外断熱に分かれます。

内断熱とは、鉄筋コンクリートの構造躯体の内側に断熱材を施す方法です。

一方、外断熱は、鉄筋コンクリートの構造躯体を包むようにして外側に断熱材を施します。

既存のマンションの多くは、施工しやすくコストも抑えやすい内断熱が採用されています。

リノベーションの場合は内断熱が一般的

マンションのリノベーションでも一般的なのは、内断熱です。

リノベーションは部屋ごとに行うことが多く、外壁は共有部でリノベーションを行えないため、内断熱で工事するのが主流となっています。

築年数の古いマンションでは、内断熱も外断熱も施されていないケースもあります。そのようなマンションのリノベーションで、快適性を求めるなら内断熱で適切に断熱性を高めることを検討して下さい。

マンション断熱工事の効果

マンションの断熱工事をすると、断熱工事をした物件では室内の温度差が少なくなります。

マンション断熱工事の効果

断熱工事をした物件と、そうでない物件をサーモグラフィーカメラで撮影し、室内の温度を比較した例があります。

この例によると、断熱工事をしていない物件のサーモ写真では暗い部分が多く(温度が低く)、断熱工事をしている物件は全体的にオレンジで、室温差が軽減されていることが見て取れます。

断熱工事をした物件に転居後の健康改善率

室内の温度だけでなく、断熱住宅は健康改善にも効果があります。

住居が高断熱住宅に変わることで、手足の冷えや気管支喘息、花粉症などの健康障害の症状が出なくなったと回答した方の割合が多くなった、との調査結果があります。

この調査以外にも、高断熱住宅の健康への影響については、様々な研究機関から複数の調査・研究結果が発表されており、健康改善に効果があるといえます。

健康改善率

まとめ

以上、基礎断熱と床断熱の違いや基礎断熱のメリット・デメリット・種類などを紹介してきました。

基礎断熱と床断熱、また基礎外断熱と基礎内断熱のそれぞれのデメリットを把握して、どの工法でリノベーションするか検討してみましょう。