住宅を購入するときは、「断熱性能にすぐれた住宅がいい」と考える人は多いのではないでしょうか。
断熱性能が低いと、夏は暑くて冬は寒く、家の中にいても快適に過ごすことができません。
断熱性能が高ければ、暑い夏や寒い冬でも快適でいられるばかりか、冷暖房費を削減することもできます。
住宅の断熱性について考えるときに知っておきたいのが、「Ua値(ユーエー値)」です。
専門的な用語なので、初めて聞いたという人もいるかもしれません。
この記事では、Ua値とはどのようなものなのかを紹介したうえで、Ua値の低い住宅に住むメリットや基準値、計算方法などを解説します。
Ua値とは、簡単に言うと「住宅から失われる熱量の平均値」です。
床や外壁、屋根(天井)、開口部などを通過して、住宅の内部から外部へと逃げる熱量を、外皮全体で平均した値で「外皮平均熱貫流率」のことを指します。
外皮とは、屋根や外壁、床、窓など住宅の外周で、熱的境界となる部分のことです。
室内の熱が外皮を通してどの程度外に逃げやすいかを数値化したもので、住宅の断熱性を判断する基準の一つとなっています。
*1 令和2年度 国土交通省補助事業『住宅省エネルギー技術講習テキスト』
Ua値は、住宅から失われる熱量の値のため、Ua値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高くなります。
Ua値が高いと熱が出入りしやすく、断熱性は低いということになります。
*2 国土交通省 参考資料【参考】住宅における外皮性能
最低限満たしておくべきUa値は、0.87以下です。
国土交通省が定める省エネ住宅のUa値の基準は、関東地方から九州地方までは最低基準が0.87となっています。
それよりも高いUa値になると断熱性能はかなり低く、「夏は暑くて冬は寒い」物件と考えられるので、快適なすまいでの暮らしを検討の方は、断熱性能や気密性を高めるリノベーションをおすすめします。
インテリックスのエコキューブ導入物件は、Ua値0.87以下を実現しています。
住宅性能が高いリノベーション済みのマンションを検討する場合、物件がエコキューブ物件済みかどうかを指標にお探しになることをおすすめします。
*2 国土交通省 参考資料【参考】住宅における外皮性能
Ua値が低く気密性の高いすまいに住むことには、さまざまなメリットがあります。
1つ目のメリットは、結露やカビを抑制できるという点です。
断熱性能が低い住宅では、室内の暖かい空気が外気で冷やされることで、結露が発生しやすくなります。
結露はカビやダニの発生源となり、住宅の劣化やアレルギーの原因となることもあります。
断熱性能と気密性が高い住宅では、結露は発生しにくくなり、カビの発生も抑制できます。
*3 国土交通省 『快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅』
2つ目のメリットは、ヒートショックの予防になるという点です。
ヒートショックとは、冬に温かい部屋から寒い部屋へと移動したときに、温度差により血管が収縮し、血圧が急激に下がって脳卒中や心筋梗塞などを起こす現象のことです。
高齢者が温かいリビングから寒い風呂場やトイレ、廊下などに移動するときによく起こっており、死亡事故となることもあります。
断熱性能を向上させれば、リビングや浴室、廊下などの室温差が少なくなり、家全体を均一な温度に保ちやすくなります。
高齢者が住むことを想定していない場合でも、身体への負荷を考えると、ヒートショックが起こりにくい高断熱住宅に住むのが良いでしょう。
*3 国土交通省 『快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅』
3つ目のメリットは、冷暖房費を節約できるという点です。
断熱性の低い住宅では、外気の影響を受けやすいため、暖房を入れていても効率的に室温を高めることができません。
その分、暖房を稼動させる必要があり、冷暖房費を余分に使ってしまいます。夏場も同様で、断熱性が低いほど、冷房を稼動させる必要があるでしょう。
Ua値が低く断熱性能の高いすまいであれば、熱損失量が少なくなるので冷暖房の効率が高まります。
冷暖房効率が高まると、エネルギー消費量を少なくできるため、冷暖房費の節約に繋がります。
*3 国土交通省 『快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅』
4つ目のメリットは、環境に優しいすまいに住めるという点です。
冷暖房効率が高まり、少ないエネルギーで稼働できるようになると、二酸化炭素の排出量が減り、エコな住宅になります。エコなすまいに住むことは、社会問題に貢献できるだけでなく、金銭的なメリットが得られます。
例えば、省エネ住宅基準を満たしていると、先に紹介した省エネ住宅ローン減税や住宅ローンを借りる際にローン金利が安くなるなどというメリットもあります。金融機関によっては、通常の住宅ローンと省エネ住宅用ローンで金利に大きな差があり、ローンの返済負担を軽減するのに役立ちます。
*3 国土交通省 『快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅』
Ua値が低い住宅に住むと、たくさんのメリットがあることが分かりました。
では、住宅のUa値を下げるには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
この章では、窓・玄関ドア・断熱材の3つにスポットを当てて、具体的な方法を紹介します。
1つ目の方法は、窓に樹脂製サッシを使用することです。住まいの中で、一般的に熱の出入りが最も大きいのは「窓」で、窓はUa値を下げるうえでとても重要です。
日本において、多くの住宅の窓にはアルミサッシと一般的な単層ガラスを組み合わせたものが使われています。
アルミは熱を通しやすく、室内の暖かさを外に逃がしたり、外気の影響で室内を冷やしてしまうデメリットがあります。
北欧や北米など寒さの厳しい地域で一般的なのは、樹脂製サッシです。
樹脂の伝熱性は、アルミの1000分の1と、断熱・遮熱に優れており、他にも気密性に非常に優れています。樹脂製フレームの窓サッシなら断熱性、遮熱性が高く、気密性にも優れているので住宅の断熱性能を高めることができます。
2つ目の方法は、断熱ドアを導入することです。住まいの断熱といえば「壁」や「窓」をイメージする人が多いかと思いますが実は玄関ドアは熱の出入りが多い場所です。
このため玄関ドアの断熱性能を高めることで、室内の温度差を軽減することができます。
※マンションの場合、玄関ドアは共有部分と管理規約で定められているケースが大多数です。玄関ドアの交換を検討の際にはご確認下さい。
3つ目の方法は、床下や屋根、外皮に接している壁などに、条件に応じて断熱性能が高い断熱材を使用することです。
ただし、どれだけ断熱性能の高い断熱材を採用したり、断熱材を厚くしたりしても、施工技術が伴っていなければ性能を充分に発揮することはできません。
また、どの程度断熱材が必要かは、温熱計算を行ったうえで判断しないと余分なコストがかかる上に、充分な効果が発揮できない原因にもなります。
そのため、断熱材の変更を検討する際は、信頼できる専門業者に相談するのがおすすめです。
ここからは、住宅のUa値がどのように求められるのかを見ていきましょう。Ua値を求める計算式は、以下の通りです。
「外皮平均熱貫流率(Ua値)W/㎡K=熱損失量(w/k)÷外皮面積(㎡)」
わかりやすくすると、Ua値=建物が損失する熱量の合計÷外皮等面積
さらに分解すると、建物が損失する熱量の合計は、
屋根の熱損失量+外壁の熱損失量+床の熱損失量+開口部の熱損失量+基礎の熱損失量で、
外皮等面積は、各部の表面積を合計することで求めることができます。
ただ、自分でUa値を計算するのは難しいため、信頼できる不動産会社や施工店、工務店、建設会社、専門業者などに計算してもらうことをおすすめします。
*2 国土交通省 参考資料【参考】住宅における外皮性能
ここからはUa値の基準について紹介していきますが、Ua値の求められる基準は地域ごとに異なります。
日本は北南に長く、北海道と沖縄では気候が大きく異なります。このため、地域ごとに求められているUa値も異なります。国土交通省では地域を8つに分けています。同県でも地域によって区分が異なるため、気になる方は国土交通省で配布されているPDFファイルをご覧ください。
次に紹介するのは、各省エネ基準ごとのUa値の基準を、地域区分別に示した表です。
お住まいの地域ではどれくらいのUa値が基準になっているのか、参考までにチェックしてみましょう。
【地域区分別のUa値の基準 】
地域区分1 | 地域区分2 | 地域区分3 | 地域区分4 | 地域区分5 | 地域区分6 | 地域区分7 | 地域区分8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
HEAT20 G3 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | – |
HEAT20 G2 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | – |
HEAT20 G1 | 0.34 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48 | 0.56 | 0.56 | – |
ZEH | 0.40 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | – |
断熱性能・等級4 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | – |
断熱性能・等級3 | 0.54 | 0.54 | 1.04 | 1.25 | 1.54 | 1.54 | 1.81 | – |
断熱性能・等級2 | 0.72 | 0.72 | 1.21 | 1.47 | 1.67 | 1.67 | 2.35 | – |
*4 国土交通省 『戸建住宅のZEH水準を上回る等級の設定について』
省エネリノベーション住宅の普及・標準化を目指し、一般社団法人リノベーション協議会が策定した「適合リノベーション住宅(R住宅)」制度でも、基準はUa値とし、3段階の☆マークで表示しています。
※1 地域区分6地域(東京等)の場合
2022年12月に、戸建て住宅の断熱等級6・7が新たに創設されました。
これは、2022年4月に創設された等級5に続くもので、さらなる上位等級ができたことになります。以下の表は、各等級の基準となるUa値を、地域ごとに示したものです。
【2022年からの省エネ基準とUa値 】
地域区分1 | 地域区分2 | 地域区分3 | 地域区分4 | 地域区分5 | 地域区分6 | 地域区分7 | 地域区分8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
断熱性能・等級7 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 | – |
断熱性能・等級6 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | – |
断熱性能・等級5 | 0.40 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | – |
断熱性能・等級4 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | – |
断熱性能・等級3 | 0.54 | 0.54 | 1.04 | 1.25 | 1.54 | 1.54 | 1.81 | – |
断熱性能・等級2 | 0.72 | 0.72 | 1.21 | 1.47 | 1.67 | 1.67 | 2.35 | – |
脱炭素社会に向けた動きが活発になっていることや、断熱性や気密性を高めた住宅づくりに関心が高まっていることの表れといえるでしょう。
*5 国土交通省 『住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設』
ZEH住宅とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスとも呼ばれています。以下の3つを通じて、1年間で消費する住宅エネルギー量が正味で概ねゼロ以下となる住宅のことを意味します。
具体的には、「断熱性能の向上」や「高効率な設備・システムの導入」、「太陽光発電等によりエネルギーを創る」ことで、一年間に消費する住宅のエネルギー量を正味ゼロ以下にすることを目指します。
ZEH住宅の基準となるUa値は、以下の通りです。
【ZEH住宅の基準となるUa値 】
地域区分1 | 地域区分2 | 地域区分3 | 地域区分4 | 地域区分5 | 地域区分6 | 地域区分7 | 地域区分8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ZEH | 0.40 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | – |
*6 国土交通省 『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の定義』
HEAT20とは、一般社団法人の「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のことです。
HEAT20では外皮の断熱性能基準として、G1~G3の3つの段階を設定しています。G1よりG2、G2よりG3と、数字が大きくなるほど高性能になります。国土交通省が定める省エネ基準や、ZEH住宅の基準よりも厳しいのが特徴です。
G1~G3の各段階の基準となるUa値は、以下の通りです。
【HEAT20のG1~G3のUa値】
地域区分1 | 地域区分2 | 地域区分3 | 地域区分4 | 地域区分5 | 地域区分6 | 地域区分7 | 地域区分8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
HEAT20 G3 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | – |
HEAT20 G2 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | – |
HEAT20 G1 | 0.34 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48 | 0.56 | 0.56 | – |
*7 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 『HEAT20 外皮性能水準』
Ua値の低い住宅に住むメリットや基準値、計算方法などを紹介しました。
Ua値は地域ごとに細かくわかれており、覚えておくことや調べることが大変です。
快適な暮らしを実現させるための住宅性能を示す指標として「断熱等級」や「R1住宅エコ表示」もこの記事では紹介させていただきましたので、すまいの断熱性について検討や調べる際にご参考にしていただければと思います。
インテリックスは、「すべての人にリノベーションで豊かな生活を」ビジョンに掲げ、日本の中古住宅市場にリノベーションという新しい価値を提案してきました。
1995年7月設立以降、累計2万5千戸(2022年12月時点)の販売を行い、中古マンションリノベーションという新しいマーケットを創造しましたが、更なる快適性能を高め、省エネ化も実現する『エコキューブ』をグループ全体で開発いたしました。リノベーションを通じて住宅性能を高めたい方や快適な暮らしを検討している方はお気軽にお問い合わせください。
https://www.intellex.co.jp/inquiry/ecocube.html
*1 令和2年度 国土交通省補助事業『住宅省エネルギー技術講習テキスト』
*2 国土交通省 参考資料【参考】住宅における外皮性能
*3 国土交通省 『快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅』
*4 国土交通省 『戸建住宅のZEH水準を上回る等級の設定について』
*5 国土交通省 『住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設』
*6 国土交通省 『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の定義』
*7 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 『HEAT20 外皮性能水準』